残業を断る「権利」があれば、定時で退社できると思いませんか?
毎日遅くまで残業していると「こんなのおかしい」「早く帰りたい」と思いますよね。ときには残業を断りたいと思うなら、残業を断れるケースと断れないケースを理解しましょう。
この記事では、あなたが残業を断るために知るべき法律の知識を紹介します。
法律の知識を持っていると、上司に対して自信を持って自分の権利を主張できます。ぜひ最後までご覧ください。
残業を断る権利があるケース5つと断る権利がないケース3つ
残業を断りたいと思っても、周りの同僚たちが残業していたら「本当に自分だけ断っていいの?」と不安になりますよね。
実は、状況によって残業を断る権利があるかどうかが変わってきます。
ここでは、残業を断れるケースと断れないケースについて詳しく確認しましょう。
残業を断れるケース5つ
残業を断る権利を定めた法律は複数あります。最も多くの方が該当するのは労働契約法第五条でしょう。残業を断るために必要な部分だけを要約して紹介しますのでぜひお読みください。
体調不良(労働契約法第五条)
労働契約法第五条は、労働者が生命・身体等の安全を確保して労働できるように、会社が配慮しなければならないと定めています。
言い換えれば、生命・身体等の安全を確保できない場合、労働そのものを断れるのです。簡単に言えば、風邪を引いたら仕事を休んでいいという法律ですね。
したがって、医師の診断書を提出すれば「生命・身体・精神等が損なわれたため安全を確保できない」と証明できますので、残業を断る権利が得られます。
妊娠・出産後から1年未満(労働基準法第六十六条)
労働基準法第六十六条は、妊娠中の労働者や産後一年未満の労働者が申請すれば、残業や深夜業務をさせてはならないと定めています。
産休の手続きがその申請にあたるので、妊娠〜産後1年未満の方は、もし出勤したとしても残業を断る権利を持ちます。
三歳未満の子どもの育児(育児介護休業法第十六条の八)
育児介護休業法第十六条の八は、三歳未満の子どもを養育する労働者が請求した場合、残業させてはならないと定めています。
請求してから1ヶ月経過しないと権利が発生しないので、手続きの方法を会社の人事担当へ問い合わせましょう。
小学生未満の子どもの育児(育児介護休業法第十七条)
育児介護休業法第十七条は、小学生未満の子どもを養育する労働者が請求した場合、一定以上の残業をさせてはならないと定めています。
一定以上の残業とは、月に24時間かつ年間で150時間です。
三歳未満の子どもの育児と同様、請求してから1ヶ月経過しないと権利が発生しません。とはいえ同時に手続きできるケースもあるので、手続きの方法を会社の人事担当へ問い合わせましょう。
家族の介護(育児介護休業法第十六条の九・第十八条)
家族を介護する労働者が請求した場合について、育児介護休業法第十六条の九は残業を禁止し、第十八条は残業時間の上限を定めています。
違いは、後述する「サブロク協定」が締結されているかどうかです。サブロク協定が締結されていなければ残業を断れますし、締結されていても一定以上の残業は断れます。
一定以上の残業とは「小学生未満の子どもの育児」で断れる時間と同じ、月に24時間かつ年間で150時間です。
介護でのケースも育児のケースと同様に、請求してから1ヶ月経過しないと権利が発生しませんので、家族の介護を予定しているなら、会社の人事担当へ問い合わせましょう。
残業が違法になる状況
また、残業を断る権利以前に、残業させるのが違法な場合もあります。あなたの会社に当てはまる条件がないか確認しましょう。
上記のような違法の残業を強要されている場合は、総合労働相談コーナーに相談するため、こちらの見出しをお読みください。
残業を断れないケース3つ
一方で、残業を断るのが難しいケースもあります。以下のような場合は注意が必要です。
サブロク協定を締結していると、会社側に残業を命じる権利があります。医師の診断書や育児・介護などの正当な理由がない限り残業を断れません。
次に、システムダウンや事故など、予期せぬ問題が発生したときは協力が求められます。今後の会社での関係性を穏やかにするためにも、断らず応じたほうが良いでしょう。
さらに、労働基準法で「監督若しくは管理の地位にある者」は労働時間や休日の規定が適用されません。結果、管理職は残業を断りにくい立場にあります。
上記のようなケースでは、むやみに残業を断るのではなく、業務負荷や働くペースを上司や同僚と相談しましょう。
残業とは?法定外労働時間とサブロク協定を理解しよう
残業について考えるとき「そもそも残業ってどんなときに発生するの?」という疑問が湧きますよね。実は、残業には明確な基準があります。
ここでは、残業の定義やサブロク協定について詳しく解説します。
定義と法律を理解して、自分の権利を理解しましょう。
残業になる基準
以下のような場合に、労働時間が残業とみなされます。
労働基準法では、原則として1日8時間、週40時間を法定労働時間と定めています。法定労働時間を超える労働が時間外労働、つまり残業です。
また労働基準法は、週1日または4週で4日の休日を与えなければならないと定めています。これを法定休日と呼び、法定休日に労働した場合、休日労働、つまり残業として扱われます。
上記のような法定労働時間と法定休日は、国が定めた法律なので会社のルールよりも優先されます。会社がどんなルールを定めていようと、1日8時間以上の労働は残業です。
法定労働時間内でも、会社が定める所定労働時間を超えた労働は、残業です。例えば1日6時間と定められたなかで8時間働いた場合や、週32時間と定められたなかで35時間働いた場合が残業にあたります。
サブロク協定とは
サブロク協定とは、労働基準法第36条に基づいて、会社と従業員の代表者の間で結ばれる協定です。この協定がないと会社は従業員に残業させられません。
サブロク協定では、以下のような内容が定められます。
通常法定外労働時間の上限は、以下のような法律の許す最大限の時間・日数で書かれています。
トラブル対応や毎年発生する繁忙期など、どうしても特別な事情がある場合は、上限をもう一段引き上げることが許されています。
サブロク協定を締結していても、届出書に書かれた時間を超えた残業は違法です。指定の時間を超えているなら労働基準監督署に通報しましょう。悪質な会社の場合、労働基準監督署によって是正勧告が出されます。
サブロク協定が締結されているかどうか確認する方法
自分の会社がサブロク協定を結んでいるか分からない場合は、どのように確認するのでしょうか。ここでは方法を3つ紹介します。
会社は、サブロク協定で定めた内容を労働者に周知する義務があります。したがって、法律を順守している会社ならば必ずどこかで確認できます。
多くの場合、就業規則にサブロク協定についての記載があります。見当たらない場合は、社内の掲示板などで掲示されていないか確認しましょう。
もしどこにも見当たらない場合は、人事部や労務部に直接確認しましょう。人事担当者も開示できなかった場合は、労働基準法第106条(法令等の周知義務)違反にあたります。
サブロク協定の締結が不透明にもかかわらず残業が発生している場合は、労働基準監督署へ相談しましょう。
断る権利を主張しても上司から残業を強要される時の対処法3選
残業を断る権利がある事実を伝えても、上司が聞く耳を持たない場合もあります。ここでは、残業を強要される場合の対処法を3つ紹介します。
以上の3つからあなたにあう対処法をみつけましょう。
人事部や労務部に相談する
初めに試すべき方法は、社内の人事部や労務部門への相談です。以下の手順を参考に人事担当者へ相談しましょう。
最初に「いつ、どのような残業を強要されたか」を具体的に記録します。可能であれば、メールやチャットのやり取りなど、残業を強要された証拠を保管しましょう。
人事部へ伝える準備が整ったら、直接会って話せるよう、事前にアポイントメントを取りましょう。そして、整理した情報をもとに、冷静に状況を説明します。
人事部は従業員と会社の間に立つ存在です。公平な立場で状況を判断し、会社のルールに基づいてアドバイスをしてくれるでしょう。
総合労働相談コーナーに相談する
社内での解決が難しい場合は、外部の相談窓口を利用するのも1つの手段です。各都道府県の労働局や全国の労働基準監督署には、総合労働相談コーナーが設置されています。
こちらのページにアクセスし、お近くの総合労働相談コーナーを探してください。
もし、労働基準法に違反している疑いがある場合は、労働基準監督署に取り次いでもらえます。
総合労働相談コーナーは、残業を断る権利を守る強力な味方です。困ったときは、相談しましょう。
会社を辞める
最後の手段として、会社を辞めるのも選択肢の1つです。退職は大きな決断なものの、健康や生活を優先的に守れます。
退職すると収入がゼロになり「生活していけないかも」と思われがちですが、手当を受給しながら転職活動を進める方法があります。
以下の記事に、当サイト管理者が実際に手当を受給していた体験を書いているので、退職後について悩んでいるなら、ぜひご覧ください。
残業を断ると不利益を被る可能性があるときの対処法
残業を断った結果、いじめや嫌がらせなどの不利益を被るケースがあります。もしあなたが残業を断ったあとに以下のような扱いを受けたなら、あなたはその会社をすぐに辞めるべきです。
上記のような取り扱いは、会社の風土や上司の人柄などが好ましくない組織で起こります。残念ながら正当な評価の範囲内なので、世の中からなくなりません。そんな会社からはできるだけ早く離れたほうが良いでしょう。
上記のような扱いを受けたことを精神科や心療内科で相談すると、何かしらの診断書が得られる可能性があります。診断書があれば退職して給付金で生活する方法があるので、ぜひこちらの記事をご一読ください。
理由がある場合は残業を断る権利がある!強要されるなら相談しよう
正当な理由があれば、残業を断る権利があります。例えば、健康上の理由や家庭の事情がある場合、サブロク協定の上限を超える場合などは、残業を断る権利を主張して良いでしょう。
残業を断る権利があっても、実際に断るのが難しいと感じる方もいるでしょう。そのようなときは、1人で抱え込まずに相談したり、会社から離れたりしましょう。
残業を強要された経験を精神科や心療内科で相談すると、診断書を得られる可能性があります。診断書を得ると退職して給付金で生活できますので、給付金をもらう生活に興味がある方は、こちらの記事もぜひご覧ください。
誰もが、自分の健康と生活を大切にして、より充実した人生を送りたいものです。不当な残業を断るためにも、残業を断る権利について正しい知識を持ち、必要な時には法律を交えて主張しましょう。
もしあなたの会社に人事部や労務部があればそちらで相談できます。もし専門の部署がなければ、こちらのページにアクセスし、お近くの総合労働相談コーナーを探してください。
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